アバシリより

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テイク・オフ・アゲイン

 みなさんこんにちは。今年もゆるゆるとやっていきますのでたまには覗いてみてください。まずはお知らせなのですが私が所属しているバンド、Koochewsenが配信シングル「ヴィーナスの恋人/深海魚のマーチ」を発売します。2月2日、itunesOTOTOYにて、価格は500円です。過去最高の仕上がりです。チェックよろしくお願いします。それでは今回は久しぶりにNBAのお話です。

 

 ダンクシュートって、かっこいいですよね。バスケットボールをやったことがある人なら誰もが一度はやってみたいと願うもので、私も高校生の頃に椅子を台にしてチャレンジした思い出があります。「同じ2点だぴょん」なんて声が聞こえてきそうですが、ゲームの流れを変えたり、チームの士気を上げるためにもダンクシュートは欠かせないプレーなのです。

 日本で1番有名なNBAプレイヤーといえばマイケル・ジョーダンかと思われますが、彼はダンカーとしても素晴らしい選手でした。他にもダンクコンテストジョーダンと熾烈な争いをしたドミニク・ウィルキンスや170センチダンカー、スパッド・ウェブ、ゴールを幾度も破壊した桁違いの威力を持つ、パワー系筆頭シャキール・オニール、名司令塔ゲイリー・ペイトンの相方で、これまたパワフルなダンクで会場を沸かせたショーン・ケンプなど当時も多彩なダンカーがリーグを盛り上げていました。

 2000年代に入るとそれまでの選手たちが持っていた技術、パワー、スピードを全て兼ね備えた史上最高とも謳われるビンス・カーターが現れます。ダンクコンテストで披露した360ウィンドミル(回転しながら腕を風車のように回すダンク)は今でも語り継がれるほどのインパクトを残しました。その後も「スーパーマン」と呼ばれたビッグマン、ドワイト・ハワードや、そのハワードを175センチながら飛び越えてダンクを決め、コンテスト優勝を果たしたネイト・ロビンソン、現役最速を誇るジョン・ウォールなど挙げればキリがない選手たちが力強いダンクを披露してきました。そう、ダンクシュートは「力」の象徴なのです。

 カーターを史上最高だと先ほど言いましたが、これは好みによって挙げる選手は人それぞれかと思います。しかし力とはまた違う、史上最も美しいダンカーは誰かと言われたら…「Dr.J」ことジュリアス・アービング以外にいないでしょう。一昨年に来日してテレビにも出演していたのでご覧になった方はいるかもしれません。

 現役選手の多くが尊敬して止まないと語るアービングは、NBAの暗黒時代である70年代に頭角を現し(当時は後にNBAに統合されるABAというリーグに所属していました)、ラリー・バード率いるボストン・セルティックスマジック・ジョンソン率いるロサンゼルス・レイカーズの名門チーム達がリーグを席巻した80年代、そのほとんどの年をこの2チームが制するなか、一矢報いた唯一のチームであるフィラデルフィア・セブンティーシクサーズを、当代一のセンター、モーゼス・マローンとともに優勝に導きました。しなやかに伸びた彼の手足から繰り出されるダンクは正に芸術そのもので、その跳躍は「飛ぶ」というより「浮き上がる」という表現の方がしっくりくる程の滑らかさでした。

 時は流れて2014年、とある青年がドラフトで指名されたチームに難色を示し、頭を抱えてひと目も憚らず「F××K」と口走り話題になりました。前置きが長くなりましたが彼こそが今回の主役、新世代最高峰ダンクシューターのザック・ラビーン君です。

 大胆不敵な態度やニヒルな笑顔とは裏腹に、彼のダンクはアービングを彷彿とさせる美しさでした。それまでの数年間、コートに高級車を持ち出したり、シャキール・オニールを玉座に座らせてその上からダンクをするなど、演出過多で煮詰まっていたダンクコンテストでしたが、彼はルーキーながら己の身体一つで往年の盛り上がりを復活させたのです。2年目には同期のパワーダンカー、アーロン・ゴードンとの一騎打ちを勝ち抜き、ダンクコンテスト連覇を達成、この二人の戦いはジョーダンとドミニクによる名勝負の再来だと高く評価されました。

 ラビーンの跳躍は先程述べた通り、アービングに近いものなのですが、軽やかさは彼の方が勝る印象で、「浮き上がる」を通り越して空中を「歩く」ようでした。漫画アイシールド21をお読みになった方は帝黒アレキサンダーズの本庄鷹を思い出していただければわかりやすいかと思います。さらに持ち前のボディバランスを活かして、ダンクだけではなくアウトサイドからのシュートも年々上達し、苦手だったディフェンスも少しずつ改善していきました。しかし昨冬、彼は左膝の靭帯を断裂する大怪我を負ってしまいます。膝の靭帯断裂は跳躍に留まらず、バスケット選手としては致命的な怪我であることは想像に難しくないと思いますが、彼は負傷後に「必ずコートに戻る」とファンに誓ったのです。

 手術を無事に成功してからの1年間、彼はリハビリとウェイトトレーニングに励みます。その間にチームの事情でトレードされ、上位を狙える補強を行ったチームから再建真っ只中の下位チームへと移籍することになってしまいましたが、それでも腐ることなく地道なリハビリを続けたラビーンは、先日ついにNBAのコートへと帰ってきたのです。

 ウェイトトレーニングの成果もあって一回り身体が大きくなったラビーンは、ダンクこそなかったものの要所で得点を決めて、制限された出場時間のなか、しっかりとチームの勝利に貢献しました。

 試合後に「リラックスしてやれた」と語るラビーンでしたが、試合中の彼の表情は真剣そのもので、ドラフトで見せた尊大さはもうそこにはありません。彼が以前のような美しいダンクシュートを出来るかどうかはまだわかりませんが、再起不能と思われた怪我を乗り越えて優勝リングを手にした選手もいます。彼のこれからのキャリアが素晴らしいものになることを、私は遠い日本の地から密かに応援していこうと思います。